2011年2月27日日曜日

1)デフレは財政再建のチャンス?


<通貨の意味を問い直す時代に>

国債が支える現在の日本の経済

現在の日本はデフレです。需要が冷え切って物が売れず、企業の投資も非常に低調なためにおカネが世の中に回らない状態が続いています。そんな中で、政府が国債によって家計や企業のおカネを吸い上げて需要を生み出すことで、かろうじてデフレ大恐慌を防いでいる状況です。その仕組みは以下のようなものです。

①家計や企業の貯蓄から国債としておカネを集めて国が投資する
②そのおカネで財が生産される、国の豊かさは維持される
③そのおカネは家計や企業の貯蓄となる
④その貯蓄から国債としておカネを集めて国が投資する
⑤永久に国債は膨張するが、経済は循環する

以上の仕組みから以下の二つのことがわかります。
A)国債に依存しても、おカネの循環が維持されれば人々の生活は保たれる。
B)家計や企業の資産が膨張し続け、国債も破綻するまで膨張し続ける。

おカネと財の生産

A「国債に依存しても、おカネの循環が維持されれば人々の生活は保たれる。」の現象は、借金だろうがなんだろうが、おカネがあれば生産力は維持・拡大され、人々の生活が向上することを意味しています。これはおカネの本質的な機能である「財の交換」が働くためです。この場合のおカネは国債に基づくものでも良いし、新規に発行された通貨でも良いし、下手をするとニセ札でも同じ効果があります。つまり、おカネには本来価値はなく、価値あるものと人々がみなすことで、それが動機となって人々が働いて、本物の価値である財(商品やサービス)が生み出される。おカネさえあれば、それがニセ札であろうと、財を生み出し人々を豊かにする。生産力が活かされる。これが通貨の循環系、フローと呼ばれる部分です。おカネが流れること、循環通貨の流れに乗って生産活動が行われます。ですからおカネを刷り続ければ経済が成り立つ。これは明白な事実です。実際にアメリカの経済はドルの信用を背景にすさまじい量のおカネを刷る事で維持されているわけです。財を生産し、人々の生活を豊かにしてくれるのは、おカネの流れ、循環通貨です。循環する通貨の量は名目GDPの額と同じであり、名目GDPの成長とは循環する通貨の量が増えることです。循環系はおカネの本質的な機能です。

貯蓄という問題

B「家計や企業の資産が膨張し続け、国債も破綻するまで膨張し続ける。」の問題は要するに財政赤字問題ですが、これはおカネの調達を国債ではなく通貨の新規発行でまかなうことで簡単に解決します。政府の財源を通貨発行でまかなってはいけないというのは単なるルールに過ぎないからです。しかしこれによって財政赤字の問題は解決する代わりに、新たな問題~C)通貨は永久に増え続け、家計と企業の貯蓄も永久に膨張し続ける~が発生します。

貯蓄はストックと呼ばれるものです。このストックは幾ら増えても財を生み出すことはありません。ゆえに貯蓄はおカネの本質ではなく、副次的な機能です。フロー系が筋肉だとしたら、ストック系は皮下脂肪です。飢えに備えるためにはいくらか必要ですが、増えすぎると経済に成人病をもたらします。なぜ貯蓄が増え続けるのでしょうか。国内生産力がまだ不十分だった高度成長期の頃の日本では、経済成長に伴う循環通貨の膨張が必要でしたから、投資という手段で、膨張する循環通貨から利息を得ることは簡単でした。ですから、貯蓄されたおカネは投資として通貨の循環系、フローへ投入され、それが生産と消費を押し上げることで経済成長を支えてきました。しかし生活水準がある程度満足できるレベルに達した現在の日本では、高度成長期のように爆発的に需要が伸びることは難しく、それどころか、日本は世界的に異常とも言える長期デフレに突入したままです。デフレとは循環する通貨の膨張が止まり、逆に減少する状態です。循環通貨の膨張の無いところに利息は生まれませんから、デフレ経済で投資する奇特な人はいません。つまり経済がデフレであり続ける限り、家計と企業の貯蓄は投資に振り向けられることは無く、永久に膨張を続けるのです。

デフレが続く限りおカネを刷り続ける事が出来る

おカネを刷ってフロー系に投入すれば、財が生み出されて人々は幸福になる。一方で家計と企業の貯蓄が無限に増大する。もし、この構造がそのままずっと続くのであれば、実は問題は何もありません。全員がハッピーです。まずこの事をしっかりと認識する必要があります。おカネを刷り続ける事が道徳的におかしいとか、そういう常識問題で考えることは無意味です。常識はしばしば本質を見誤らせます。フロー系をいかに活性化させて人々を幸福たらしめるか。そのためにこそおカネの存在価値があるはずです。問題が発生するとすれば、家計と企業が貯まったおカネを使おうと考え始めたときに発生します。おカネを使おうと考えるとは、需要がどんどん高まることですから、つまり好景気です。好景気になると、貯まったおカネが需要に向けられますので、それをカバーするだけの国内生産力や輸入が確保できなければインフレになります。逆に永久に日本が好景気にならないのであれば、永遠におカネを刷り続けても問題ないことになります。

デフレは財政再建のチャンス

巷には「デフレは不可避」「少子高齢化でデフレ」という話が続々と流れてきますし、日銀もデフレに誘導しているようですから、日本経済は永久にデフレ不況かも知れませんね。デフレ不況である限りは、貯蓄は消費に向けられる心配はありません。しかもデフレは永久に続くという論調が支配的ですから、これはおカネを刷り続けることのできる絶好のチャンスでしょう。つまり、日本のデフレは不可避で永久に続くという論が、通貨の永久増発の根拠なのです。国債の新規発行はただちに中止し、財政再建のために通貨を発行すべきです。デフレが永久に続くのであれば、これは財政再建のチャンスなのです。

本当にデフレは永久に続くのか?

通貨を発行し続ければ必ずデフレは脱却できます。ですから実際にはすべての財政赤字を通貨発行で埋め合わせる前に、デフレが解消されますから、それ以上の通貨発行は不可能になるはずです。もしデフレが続くのであれば、すべての財政赤字を通貨発行で返済でき、さらに財源をすべて通貨発行に頼る無税国家が誕生してしまいます。

(つづく)