2015年1月14日水曜日

富裕層への課税強化は経済を阻害するか

とある新聞の社説を読んでいたら「ピケティの仮説は正しいか」として、「富裕層への重税は働く意欲を失わせ、富の創出そのものを阻害する」ような内容の話が書いてありました。本当にそうでしょうか。非常に強い違和感を覚えますね。

そもそも紙面において、富裕層への「課税」ではなく「重税」という言葉を、どのような意図で使用したのか極めて不信感を覚えますね。ピケティの主張は「資産課税」ですから、富裕層へ課税するとしても、よほど多くの資産を保有しない限り税率は1~2%程度になるでしょう。それが「重税」だとは、とても思えません。課税は「富裕層いじめである」という、意図的な誇張がありますね。

しかも、ピケティは「資本収益率が経済成長率を上回っている」という部分を問題視しているわけですから、実際には「カネの力でどんどん肥大化する」大資産家が課税の対象になります。彼らは労働して富を生み出しているわけではありません。いまや、バブルを起こして利ザヤを抜くのが実態です。ですから、資産への課税によって資産家の「カネを増やしたいという欲望」が減ることがあったとしても、働く意欲など最初からありませんから、減るはずもない。

さらに言えば、「カネを増やしたいという欲望」によって成り立つ資本主義そのものが、先進国においては機能しなくなりつつあります。だから資産家は先進国におカネを投じることなく、通貨膨張の大きい途上国へこぞって投資します。もちろん、人々の生活向上が目的ではなく、カネを増やすことが目的です。

「カネを増やしたいという欲望」=「エゴイズム」によって経済が成り立つという考えは、あまりにも古すぎます。旧来の価値観にしがみ付くのではなく、むしろ、新たな経済成長のインセンティブを提案するくらいの気構えが無いなら、新聞というマスコミの存在価値はないと思いますね。

「富裕層への課税は働く意欲を失わせ、富の創出そのものを阻害する」というのは、ステレオタイプな考えに過ぎないと思います。このあたりは、本編でもっと詳しく考えてみたいテーマですね。