2015年2月5日木曜日

ピケティ不等式(r>g)の真偽は問題でない

ピケティに対する批判の中には、不等式(資本収益率r>g経済成長率)が資本主義の定理であるとの論理的根拠が不明であるとの批判があります。そのため、過去において(r>g)であったとしても、将来に(r>g)であるとは限らないといいます。そんなの当たり前ですね。

彼らが出すのは「資本収益率逓減論」という考えです。それは「資本蓄積が進むにつれ、資本収益率が低下する」というものです。しかしピケティ不等式と同様に、資本収益率逓減論も証明されていません。あくまで仮説なのです。それどころか、ピケティが指摘するように、資本収益率逓減論は過去におけるデータと矛盾しているわけです。科学では、事実と異なる理論は淘汰されます。

しかし最も重要なのは、そんなことではありません。

たしかに過去において(r>g)であったとしても、将来に(r>g)であるとは限らないと言えます。しかし、過去において(r>g)であったなら、それが将来にもわたって続くであろうという予測に基づいて行動する方が科学的です。そうです。過去のデータこそが判断のための重大要素であり、ピケティ不等式(r>g)の真偽は無関係なのです。

たとえば、人口減少問題が例になります。人口減少現象の論理的根拠は明確でありません。様々な理由が語られますが、それは格差問題も同じように様々に語られています。しかし、どちらも決定的な論理的根拠がないという意味において同じです。ですから、同様の論法で行けば、人口は将来においても減り続けるとは限らない、と言えます。

しかし、人口減少はデータから明らかにその傾向があり、今後も人口減少が続くと予測して対策が取られます。それが科学的な姿勢です。人口が減り続けるとは限らないから放置しろという人はいませんね。

一方、格差が拡大している傾向がデータから明らかであるにも関わらず、今後も格差が拡大するとは限らないから放置しろという人がいるのは、非常に不思議です。一般にこれを「ダブルスタンダード現象」と呼べるでしょう。

つまり、ピケティ不等式(r>g)の真偽は問題でない。
重要なのは継時的なデータの傾向にあります。