2015年2月9日月曜日

NHKネクストワールド「不確かな未来」に違和感

NHKネクストワールド番組シリーズの最終回が放映されました。テクノロジー好きな自分は番組に対して散々ケチを付けつつ、全5編をすべて見たわけですが、映像的、取材内容的には申し分ないという感想です。しかし最後に語られた、なにか結論めいたメッセージには違和感を思えました。

どうやらNHKネクストワールドの立ち位置は「不確かな未来を肯定する」という事のようです。しかし、自分の立ち位置は「ビジョンを持ち、不確かな未来を確かにする」であるため、非常に強い違和感を覚えてしまったのです。

自分はほとんどのテクノロジーについて肯定的であり、テクノロジーの進化については何の不安もありません。しかし、テクノロジーが社会構造、経済システムに与えるインパクトは極めて重大であり、テクノロジーによる人間の関連性や生産システムの構造的変化こそが「ネクストワールド」であると考えています。

この番組では、基本的な社会の構造は30年後と現代はほとんど変化していません。物質的な環境は変化していますが、社会そのものの変化については何ら語られません。ですから、自分の目に映った番組はネクストワールドではなく「ネクストテクノロジー」に過ぎなかったのです。相変わらずボロクソ言って申し訳ないですが。

そして最も違和感が強かったのがエンディングです。

どうなるのか予測できないテクノロジーの進歩に不安を持っていた主人公が、むしろ予測できない、不確かな未来を受け入れ、火星への移住を希望する。予測不能だからこそ、そこへワクワクして飛び込んでゆく様が描かれて終わりとなります。

不確かな未来を不確かなまま受け入れる。

まあ、そんな人生もありかも知れませんが、自分はたとえ未来が予測不能でも、不確かな未来は受け入れません。なぜなら、「予測不能=不確かな未来」ではないからです。未来が予測不能だからと言って、そのまま受け入れるなど意味がない。その姿勢はあまりに受動的であり、あまりにビジョンがありません。経営学に興味がある自分にとって、ビジョンなき未来などあり得ないのです。

そして、このネクストワールドという番組を見て、いま、人類はビジョンなき未来に向かって、人間の欲望のままに暴走しているという事を確信しました。テクノロジーは利用すべきものであり、利用されてはいけない。そこにはコントロールも不可欠です。禁止ではなく、コントロール、調整です。

自分は社会のマクロコントロールつまり、システムの最適化に最も関心があります。といっても社会主義のような管理ではありません。旧来の社会主義システムのようなコントロールは非現実的であり、量子力学のように、不確実性を内包したうえでのコントロール理論があると考えています。

そして実際、マクロ経済の理論とはそのようなものであり、それが確立されていないからこそ、「不確かなまま」経済と社会が漂流し続けていると思われるのです。

ビジョンを持ち、不確かな未来を確かにする。
それが自分の立ち位置です。