2015年3月14日土曜日

生産性向上の目的と資本主義・ポスト資本主義

生産性の追求といえば、何か資本主義的なものと考える人が多いのではないでしょうか。日本の左派を観察すると、経済成長を否定するなど、生産性の向上を目指していないように感じられます。しかし自分はまるきり反対で、次の時代を担うポスト資本主義(社会主義という言葉のイメージが誤解を生むので使うのをやめます)こそ生産性を徹底的に追求すべきだと考えています。しかし、その目的は資本主義とは異なります。

資本主義における生産性の向上は、利益つまりおカネが目的です。ですから生産性が向上すると従業員を「解雇」することでコストダウンを図り、市場競争力と利益を確保します。つまり資本主義における生産性の向上は常に「解雇」が伴い、利益が最優先されます。それは企業という存在が悪いからではなく、そうしなければ生き残れない経済システムになっているからです。企業もシステムに逆らえば滅びるのみです。

ポスト資本主義における生産性の向上は、「カネを稼ぐために労働する」ことからの解放を目的とします。生産性が向上すれば、労働時間が短縮できます。雇用はワークシェアリングにより維持します。労働時間が短縮されれば、残りの時間を「おカネを稼ぐこと以外の活動」に充てる事ができます。たとえば、週休4日制になれば、その4日間を怠けているのも、ボランティアするのも、芸術やスポーツ活動するのも自由です。おカネに縛られず自由に活動できる。おカネ以外の目的のために働くことができます。

もちろん一つの仕事が生きがいなら無休でどんどん休日出勤しても問題ないですし、自営業なら365日働き続けても、誰にも文句を言われる筋合いはないでしょう。

ところで、すぐにわかる事ですが、ポスト資本主義は途上国のように供給力が低くて人々の需要を十分に満たせないような国には導入できません。そのような国では労働時間を短縮すれば国民が貧しくなるからです。資本主義が高度に進歩して生産技術が向上し、生産力がどんどん過剰になって失業が増え、モノが余るような社会になって初めて労働時間の短縮が可能になると思います。

そして、残念ながらいまの資本主義のままでは、生産性の向上による「労働時間の短縮」は不可能です。いまのままでは生産性の向上は失業を増やし続けるだけです。なぜなら、資本主義は利益最優先のため「長時間・低賃金労働」の企業が生き残るシステムになっているからです。システムを変えるときです。システムを変えない限り、システムに逆らえば滅びるのみです。