2015年5月10日日曜日

生産性向上と賃上げを同一線上にせよ

安倍総理は経済成長のためには生産性向上が欠かせないとの信念から、労働規制の緩和に取り組んでいるようだ。確かに経済成長のためには生産性の向上は欠かせない。ただし、経済成長とは「生産額の拡大」であると同時に「消費額の拡大」でもある。三面等価の原則から明らかだ。つまり、消費なき生産は経済成長にならない。

最も効果的な生産性の向上とは、生産技術の開発によってもたらされる。それは社会全体としての生産性を高める可能性を秘めている。しかし労働規制の緩和による生産性の向上は、企業における生産性を高めるが、社会全体の生産性には何ら寄与しない。失業や賃下げによって社会全体の生産性を低下させるからだ。

社会全体の生産性と企業の生産性は一致しない。この点に対する対策を行わないままに労働規制緩和を進めると賃金の分配と消費の拡大が伴わずに、企業の生産性が向上しても経済は成長できない。一方で、左派政党のように、盲目的に賃上げを要求しても、生産性が向上しなければ分配を増やしたところで、やがて限界に突き当たるのである。

最も重要なのは生産技術の開発や、新しい需要の創出である。これと同時に労働規制緩和が行われ、労働力の適切な再配置と賃上げがすべて達成されてこそ、生産性の向上が経済成長と国民生活の向上を可能とすると思われる。