2015年5月25日月曜日

経済成長とクラウドファウンディング

近年の経済不況は「貯蓄の過剰と投資の不足」に根本的な原因があるとされています。それでは、投資を必要としない経済成長の方法、景気回復の手段はないのでしょうか。そうした疑問に対して、クラウドファウンディングという資金調達の手法が一つの解決策を提示しているような気がします。

クラウドファウンディングとは、インターネットを通じて多数の人々(クラウド)から資金を調達する方法で、一人あたりから入手できる金額が小さくても人数が多くなればそれなりにまとまった資金を入手することができます。これはゲームの開発において最近盛んに行われています。

具体的には、あるゲームのアイディアを持った個人や企業がゲームの企画書(あるいはムービー)や見本(一部分が完成したもの)をネット上に提示して、このゲームの開発賛同者(購入希望者)を募集し、一口あたりおおよそゲームの購入代金と同程度の資金を各賛同者から集金します。そして一定の期間内に開発に必要な目標金額の資金が集まったら、そのおカネで開発がスタートし、おカネが足りなかったら開発は中止され、おカネは賛同者に返金されます。

そして、開発期間中に開発途中のゲームが賛同者に提供され、ユーザーの意見を収集してゲーム開発に反映される仕組みになっており、最終的には完成版のゲームソフトが賛同者に提供されます。

この方法が非常に面白いのは、多数のエンドユーザーから、予約販売のような形で広く開発資金を集める事ができる点にあります。投資による商品開発の場合は、投資家がおカネを増やす目的で投資して利息を得るわけですが、クラウドファウンディングによる開発の場合は、ユーザーが商品を手に入れる目的で投資して商品を手に入れます。開発に投資家を必要としません。

今までの考え方では、銀行や投資家による投資によって開発が行われなければ生産は行われず、商品が生まれる事はありませんでした。クラウドファウンディングでは投資が行われなくても、ユーザーが商品を手に入れる目的でおカネが集まり、開発がスタートします。ですから多数の消費者のニーズがあれば銀行投資家による投資を必要としないのです。これは高度にインターネットが普及した今世紀において可能になった新しい方法です。

ただし、クラウドファウンディングはソフトウェア開発のように、比較的予算規模が小さくて完結でき、かつ開発の経過がネットで確認できる分野には向いていますが、ハードウェア商品では具体的にどのように応用できるのかまだ良く分かりません。しかし「投資を必要としない」方法として、今後の経済成長に一つの可能性を開くのではないかと期待しています。

まさに「供給が需要を生み出す時代」は終わり、「需要が供給を生み出す時代」になったと思います。