2015年6月13日土曜日

安保法案 左派が偏向していると言える理由

安全保障法案の改正を巡って日本の政治が大揺れの状態だ。衆院憲法審査会で出席した3名の憲法学者すべてが、今回の安保改正案は違憲であるとの見解を示したため、ますますもって安保法制改定に反対する左派系野党を中心として反対運動が展開されている。

しかし物事は常に客観的に分析して考えねばならない。その点において、左派系の政党もマスコミも対応が偏向していると思わざるを得ない。

あらゆる場面において、問題が発生した場合の対処方法には「原因を除去する方法」と「原因を除去せずに対応する方法」がある。たとえば疾病の場合にはこれを「根治療法」と「対症療法」と呼ぶ。つまり対処には二つの方法がある。

こうした考えを安全保障に適用してみると、まず安全保障法案の改正に至った要因は何であろうか。中国共産党による尖閣諸島への侵略的行動が始まったことである。それと同時に、中国による日本への外交的な圧力も活発化している。中国の軍事的な圧力の強化が要因となっている。

これに対して中国共産党は、中国の軍事的な圧力強化の原因は日本にあると主張するだろうが、そのような理由づけには意味がない。やろうと思えば理由などいくらでも付けられるからだ。問題には「主因」と「誘因」がある。尖閣問題における「誘因」は中国共産党と日本政府の見解の違いであるかも知れないし、日本の態度が変化したことかも知れない。しかし、今回の安全保障法案改定の「主因」となっているのは、軍事的な拡張を続ける中国にあるのは明らかだ。中国の軍事的な拡張がなけれな安保法改正は必要ない。

中国の軍事的な拡張に対処するには二つの方法がある。一つは対症療法であり、安保法制の改正がそれである。主因であるところの中国の軍事的な拡張と圧力を取り除くのではなく、それに対処する方法である。その対処方法を巡って与野党が対立しているわけだ。方法論は複数あるので、対立するのは悪いことではない。ただし議論の中心はあくまでも「安全を守る方法として何が良いか」を検討することであって、合憲か違憲かの議論は本末転倒であろう。たとえ違憲であったとしても方法論として正しいのであれば、むしろ憲法を改正しなければならない。憲法を守る事に意味があるのではなく、憲法によって国を守る事に意味がある。

もう一つの方法は根治療法であり、これは中国の軍事的な拡張や圧力を除去する方法である。これは軍事的に中国共産党軍を破壊することも含まれるが、現実的ではない。実際には様々な外交的な圧力を加えることで相手の態度を変えさせる。この方法では原因を除去しきれないが、原因を弱めることはできるだろう。安保法制が日本の国内において準備を整える行動であったのに対して、こちらはより積極的に直接に原因である中国共産党へ圧力をかける方法である。

ところが、根治療法について、左派系の野党やマスコミはほとんど何も行わないに等しい。またいわゆる左派系の市民団体も何も行わないのである。野党が中国共産党を激しく非難する話も聞かないし、中国に対する軍備縮小の要求もしないし、チベットやモンゴルなどの人権問題を通じた圧力もかけない。問題解決の方法が二種類あれば、その両方を使うのが常識的な判断であろう。そんな中途半端なやり方では問題は解決しない。

安保法制に反対するのは悪いことではないが、それはあくまでも「対症療法」をどうするかの問題である。「根治療法」を放棄したままでは、問題など解決しないことを理解すべきだ。