2015年7月21日火曜日

ギリシャ問題 原因は単純でない

メディアの論調の中にはギリシャ債務危機問題に対して非常に一面的な見方をするものもあります。しかしギリシャ問題は非常に複雑であって、単に借金を返す、返さないの問題ではないと思われます。ギリシャが債務を抱えるようになった原因は何か、それを思いつくところで挙げてみます。

①ギリシャがユーロ圏に加盟した
根本的にこれが大間違い。ギリシャ政府とゴールドマン・サックスが加盟にあたってギリシャの財務を粉飾したと言われ、このようなユーロ加盟を強引に進める一部勢力によって仕組まれた加盟は、正当な加盟ではない。ユーロ圏の審査も甘すぎた。およそ陰謀に近い。

②ギリシャの経済体質がユーロ圏と違い過ぎ
ギリシャは社会主義的な体質が強く対外的な産業競争力が弱い。ドイツなどとは大きく異なる。同一通貨を使用すると、同じ土俵で競争することになるため、ギリシャの貿易赤字は最初から目に見えていたのです。貿易赤字は財政を悪化させます。
A)公務員が多く、年金などの支給もゆる過ぎ
B)産業を育成する力が弱い、規制、賃金が高い
C)ギリシャ人の価値観や生活上の習慣も競争力に関与

③為替による調整機能が失われた
統一通貨を使用すると為替の調整機能(為替の上下によって対外的な競争力の差、貿易不均衡が自動的に調整される)が失われる。これによって国内の産業育成が難しくなる一方で、輸入に歯止めがきかなくなる。この問題はユーロ発足以前から指摘されている。

④金融政策が使えなくなった
統一通貨を使用すると金融政策が使えなくなる。現在日本で行われている金融緩和による景気刺激策が使えず、政府が借金して景気を刺激するしか方法がない。このため、政府の借金が膨張しやすく、もし借金しても景気が回復しなければ確実に破綻する。

⑤サブプライムローンバブル崩壊
バブルが発生すると経済が好調になるので、債務を増やしやすい状況になります。バブルが崩壊すると信用通貨の収縮によって経済活動が低下し、税収が大きく落ち込む事になります。それまで債務の返済が可能な状況だったとしても、バブル崩壊で不可能となり、危機が発生します。ギリシャに限らず、スペイン、ポルトガルでも同じ状況となった。もちろん借り入れを増やす方にも問題はあります。

⑥ギリシャ人がユーロの功罪を理解していない
もしかすると、これが最大の問題かも知れません。ユーロを使えばどうなるか?ギリシャの多くの人は理解していないでしょう。これはギリシャのマスコミに大きな問題があると言えます。大衆を啓蒙する立場にあるマスコミが機能していない。そもそもギリシャ人に対するアンケートでは「緊縮には反対だが、ユーロ圏に留まりたい」などという矛盾した結果が出ていますが、まさにそれです。

以上を考えるとギリシャ問題の原因は、ギリシャ政府に問題があったこと、あるいはギリシャの国内事情に問題があったこと、そもそもシステムに問題があったこと、バブルなどの外的要因があったことなど様々であり、「怠け者のギリシャ人はカネを返せ」というのは短絡的に過ぎると思われます。

それにしてもギリシャ人が「ユーロ通貨に甘い幻想を抱いている」ことが、最も大きな問題なのではないでしょうか。通貨統合とはそんな甘いもんじゃありません。関税も為替もない自由貿易の戦場に参戦するのですから。