2015年10月14日水曜日

TPP 農業補助金は保険として必要

TPPによる農産物の関税撤廃が、日本の農業にダメージを与えることは必至であり、それによって、それでなくとも低い日本の食料自給率がさらに低下する恐れもあるわけです。これを防ぐためには農業補助金により日本の食糧生産力を維持することが必要だと思います。

確かに効率だけを考えれば、明らかに海外から安い農産物を輸入した方が良いことは誰にでもわかります。食料自給率を維持することはある意味で無駄なのです。しかし「ムダ」こそが、システムの強じん性を高める極めて重要なファクターであることもまた、ご理解いただけるはずです。

たとえば、東日本大震災において、平時であればムダとも思われる過剰な道路網があったからこそ、震災で道路が寸断された状態にあっても、物流が確保できたという実例がありますし、人間の体にあっても腎臓が2つあったり、「側副血行路」という、いわば普段はあまり働かないような血管もあるわけですで、これによって片側の腎臓の機能が失われたり、血管が詰まっても致命的な状態に至らずに済みます。アリの社会においても最近の研究では25%のアリは全く働かないという現象も観察されていますが、こうした現象もまた「ムダ」がシステムにとって重要な役割を果たすことを示唆します。

農業を「ムダ」と見る向きはいささか失礼かも知れませんが、社会システムとして考えた場合には、ムダとは実際には無駄ではないわけです。それは「ゆとり」であり、生産性の低い農業が社会に存続する事こそ、先進国の豊かさのあかしであり、ゆとりであるわけです。

地球温暖化などにより世界的な異常気象が観測される中、不測の事態が発生しないとも限りません。こうしたリスクに対応するためには保険が必要です。保険は平時においては無駄な出費です。不測の事態が生じなければ非効率的ですから、保険など止めてしまえばよいのですが、実際には事故が発生します。そのような、リスクヘッジの保険としての意味から言えば、農業補助金はシステムの強靭化のために必要な「経費」であって、バラマキでもなんでもないと思うのです。