2016年5月24日火曜日

「AIで仕事消滅」にワークシェアという選択肢

ベーシックインカムに反対する理由として「人間が労働せずに所得を得るのは問題である」という主張が見られます。これは道徳的価値観ですが、一理あるような気もします。それならワークシェアリングの話が出て来ても不思議はありません。

ロボットやAIの進歩によって人間の必要労働量は確実に減少し、それが失業を生み出して経済を麻痺させます。働けと言っても、仕事の量が減るのですから、全員が毎週38時間労働するのは無理です。この問題への対応方法としてワークシェアリングがあります。生産活動に必要な労働時間を分け合うわけです。

仕事を分け合えば失業する人は出ません。簡単に言えば、1人あたりの働く量を減らすわけです。単純に言えば、生産性が2倍になれば、必要労働時間は2分の1になります。すると職種や業種によって違いますが、たとえば一日4時間労働にするとか、週休4日制にするとか、4ヵ月長期休暇を導入するなど方法はいろいろだと思います。これを立法化します。

とはいえ、問題があります。

労働時間が減っても支給される賃金を減らしては意味がありません。賃金を維持しなければ、労働者の総購買力が低下してしまうからです。たとえば労働時間が1人4時間に半減したからと言って給料を半分にすると、生産された財の消費が半分に減って、GDPが半分になります。

つまり総生産金額を総労働時間で除しただけの賃金を支給しなければ売れ残りが生じます(デフレ)。単純に言えば、生産性が2倍になれば、時給も2倍にしなければなりません。しかし市場経済の常識から言えば、こんなことは不可能です。一般に企業の生産性が2倍になれば、労働者をクビにしてコストダウンするのが市場経済システムだからです。しかもグローバル経済ですから、国内で雇用を維持しても、海外から低賃金労働の格安商品がどんどん輸入されてきますから、労働者を解雇しない企業は淘汰されます。

グローバル経済では、ワークシェアリングは成立しない。
そういう問題があります。

ですから、グローバル資本主義社会においてワークシェアリングを成立させるためには、企業のコストダウン(価格競争力)を成立させなければならないことがわかります。企業は生産性が向上すれば必ず人件費をカットしようとしますので、もし雇用を維持するなら賃金単価を必ず引き下げます。これは労働者の購買力を低下することになり、デフレ不況に繋がります。ですから、その分だけ公的に所得を補填すれば良いわけです。

これは所得保証としてすべての人に支給されますが、所得が十分にある富裕層には支給されませんので、ベーシックインカムとは異なります。違う形での給付金制度となります。これがないとワークシェアリングは成立しないはずです。

なお、通貨循環システムとしては法人税を用います。給付された通貨は企業の利益を押し上げる形となりますから、それらの通貨を法人税を引き上げて回収し、再循環させるわけです。企業にとって法人税が強化される分はマイナスですが、人件費のコストダウンと売り上げ維持により利益率が大きく向上する分はプラスとなります。ですから相殺で済むと思われます。タックスヘイブン対策は必要だと思われます。

これは一つのアイディアですが、ベーシックインカムに反対であれば、こういう方法もあると思います。これなら働く時間は減りますが、働かなくなる人は生じません。

それにしても、仕事がなくなると騒ぐ人は多いですが、ワークシェアリングの話はまったく聞こえてきませんね。不思議です。