2016年6月13日月曜日

脱時間給は生産性向上と無関係

雇用分野における構造改革と称して、「脱時間給」が語られますが、生産性向上、つまり日本の潜在成長率と脱時間給は関係ありません。脱時間給は単なる労働強化と株主利益の積み増しです。

生産性の向上とは何でしょうか?
1人あたりの財(物やサービス)の生産量を増やすことです。

なぜ生産性の向上が必要なのでしょうか?
労働人口が減少するぶんだけ、1人あたりの生産量を増やす必要があるからです。

脱時間給で生産量は増えますか?増えるはずがありません。逆に残業を減らせば生産量が減少するくらいです。生産量を増やすのではなく、賃金を減らすだけなのです。賃金が減れば、労働者(=消費者)の購買力が低下して消費総量は悪化します。それが今の日本に必要なのでしょうか?それが日本の潜在成長率を高めるのでしょうか?

一方、株主や経営側の立場で見れば事情は違います。脱時間給で支払賃金を減らすと人件費総額が減り、そのぶんだけ企業利益つまり株主利益が増加します。脱時間給を主張する人々の狙いはここにあるのでしょう。結果として、資本家と労働者の格差を拡大してしまいます。彼らは株主利益が増えれば投資が増えるとか言うでしょうが、収益率が多少向上したところで、今までの動きを見る限り、投資ではなく内部留保が増えるだけです。

誰が脱時間給を必死に主張しているか、注意したいですね。

ところで、脱時間給とは異なり、「雇用の流動化」は生産性の向上にとって不可欠です。ただし、タイミングと制度をしっかり検討しなければ、労働者をモノとしか見ない資本家に、首切りの口実として使われるだけで終わりますから、注意が必要だと思います。