2016年7月19日火曜日

ヘリマネ=打ち出の小槌? 信用創造は?

新聞のコラムに「ヘリマネは打ち出の小槌だ」という話が出てきました。こういう素人を騙すための比喩は、だいたい同じような表現が昔から繰り返されています。また始まったという感じ。そもそも「通貨発行」とは打ち出の小槌そのものなのですが、普通の人はそれを知らないために、なにか悪いことでもしていると感じるかも知れません。

打ち出の小槌とは何か?何もないところからおかねをポンと作り出すことです。だとすれば、貨幣を鋳造すれば、それはおカネを作ったことですから打ち出の小槌です。逆に言えば、打ち出の小槌でない方法でおカネを作ることなど可能なのでしょうか?そもそも世の中におカネというものは存在しませんでした。だから無から作ったのです。

ですから通貨発行とは打ち出の小槌そのものであって、打ち出の小槌がなかったら、世の中におカネは存在しません。重要なことは、その打ち出の小槌、いかに上手に使いこなすかという点にあります。もちろん無限に振るわけにいかないのは当然です。

もしヘリマネが打ち出の小槌なら、民間銀行の信用創造=貸し出しもまた、打ち出の小槌以外の何物でもありません。銀行は現金(マネタリーベース)を元にして、その何倍もの預金を信用創造で帳簿に発生させ、それを企業や個人に貸し出しています。たとえば、10万円の現金を元に、100万円の預金を貸し出す。これが信用創造であり、この時に発生する預金が信用通貨です。これは通貨発行の一つの形態です。

10万円を元に100万円を貸すのですから、これはまさに打ち出の小槌です(無から90万円がポンと増える)。こうして銀行によっておカネが何倍にも増えて貸し出されることが、バブル経済とインフレの根本的な原因となっています。もし、銀行が信用創造でおカネを増やさず、普通に保有する現金を貸し出すだけであれば、バブルもインフレも起こりません。

ただし、銀行の発行する預金通貨は「債務として供給される」ため、必ず銀行に返済されることになります。つまり、基本的に世の中の預金はすべて「消える」。無に戻る。なぜなら、無から生み出されたおカネだからです。まさに幻のおカネを作って貸し出しているわけです。

現金も同じように、打ち出の小槌を使って債務として供給されますが、たとえば日銀が国債を保有し続ける限り、それと同額の現金は日銀に返済する必要はない、つまり、消えることはありません。それがヘリマネの事です。

さらにいえば、一部の識者が主張するように、もし、少しヘリマネをやっただけで、坂道を転げるようにインフレが止まらなくなるとすれば、その原因は「信用創造」にあります。銀行が打ち出の小槌を使って、現金を何倍にも何十倍にも増やして貸し出すため、インフレが止まらなくなるのです。