2016年7月4日月曜日

なぜ自由貿易離脱で失業増加?

英国がEU離脱して自由貿易圏を離れると、英国の失業が増加してGDPが減ると報道されています。それだけ聞けば、あたかも自由貿易圏が失業を減らしてGDPを増やす効果があるように聞こえますが、必ずしもそうとは言えないでしょう。

自由貿易圏を離れるのも、自由貿易圏に参加するのも、どちらも「環境変化」です。その国の産業構造は環境に応じて、それに適合するように変化します。ただし変化には時間が必要です。急激な変化にはついて行けないのです。

たとえば、英国のように長年にわたってEUの自由貿易圏に参加していた場合、自由貿易という環境に産業構造が適応しています。自由貿易に最適化された産業構造になっています。そのため、いきなり貿易ルールが変化すると、産業構造がついて行けないわけです。

新たな貿易ルールに適合するまでの間、産業構造の組み換えが行われますから、ある企業は衰退し、ある企業は成長し、それに伴って失業が増加したり再雇用されたりします。変化が急であればあるほど混乱します。これが失業の増加とGDPの減少となって現れると思われます。

一方、こうした混乱の時期を過ぎると、産業構造が新しい環境に最適化されてきますので、失業は減少し、GDPも元に戻ると考えられます。ただし、完全自由貿易のままの経済成長と、離脱した環境での経済成長のどっちが大きいか、という予想は難しい。

経済成長率だけから言えば、完全自由貿易による完全分業の方が効率が高いですから、差が生じる可能性はあるでしょう。しかし仮に経済成長率に違いがあったとしても、失業率、格差(貧困率)、出生率、犯罪など、様々な観点から総合的に評価されるべきでしょう。経済が成長しても富裕層が豊かになるだけでは意味がありません。

この逆に、TPPなど、完全自由貿易に参加すれば、やはり環境が変化します。それに合わせて産業構造が変化することになり、失業の増加などの影響が生じる可能性があるかも知れません。