2016年10月5日水曜日

ノーベル賞の将来は日本よりも中国へ?

今年のノーベル賞(医学生理学賞)に日本人である大隅教授が受賞されたことで、ここ数年の日本人のノーベル賞受賞に世間が沸いています。しかしその大隅教授はむしろ日本の基礎研究の空洞化を心配しておられました。こうした基礎研究の不足に関しては、近年の日本の受賞者も共通して指摘されています。

基礎研究はおカネにならないので、こうした分野は公的な研究助成が欠かせないと思われるわけですが、では日本の近年の公的な研究開発費予算はどうなのでしょうか。これは、経済産業省によるレポート「我が国の産業技術に関する研究開発活動の動向」掲載されています。その2014年版のP.26より以下に図を引用します。



この図より、アメリカがスバ抜けて多いわけですが、その60%近くが軍事研究です。しかし軍事技術の民間転用は十分に大きいわけですから(ちなみにインターネットも軍事技術が起源)、含めて考えるべきでしょう。そして日本が失われた20年で研究開発費が伸び悩む中で、世界各国は徐々に予算を拡大しており、中でも中国の伸びは急激であり、すでに日本の3倍に達する勢いです。

たとえ日本で若い研究者が育ったとしても、彼らを受け入れるべき研究機関が増えなければ、そうした若者は職を得ることができず、海外へどんどん出て行くしかないのです。もしかすると、これからの世界の研究者は中国を目指すことになるのかも知れません。

基礎研究はカネになりません。いわゆる経済的な成果を期待できる分野ではないし、何が後世の役に立つかもわからない研究です。わけのわからないものに、ひたすら挑戦する、ある意味、大いなるムダこそが基礎研究なのです。オートファジー研究なんか、失礼ですが、面白いだけの現象であって、役に立つなんて想像も付かない時代にスタートした話です。私も生物系出身なので良くわかります。

大隅教授の受賞を期に、これをもっと国民が理解し、経済的にムダな研究に多くのおカネを費やすようにならなければ、10年後のノーベル賞は日本ではなく、中国の時代になるに違いないと思います。