2016年10月27日木曜日

「企業の6割が人手不足」の不思議

財務省の調査によると、企業の6割が人手不足であると回答しているそうです。実に不思議です。人手不足なら労働市場において賃金の上昇が見られるはずですが、実際には顕著な実質賃金の上昇は見られず、政府が前代未聞の「企業への賃上げ要請」をしつこく行っている状況です。

企業いわく「募集かけても人が集まらない」。それって、お前んとこの給料が安いからじゃないのかw、と突っ込みたくはなりますが、まあ、それはさておき、

先行投資を別にすれば、人手不足と言うことは、生産量が増加していることの裏返しのはずです。生産が増えるから人手が足りなくなる。しかし、このところ消費は低迷しており(実質成長がほどんどない)、ゆえにインフレ率も上昇してこない。つまり、生産量はそれほど伸びていないはずなのに、なぜ人手が足りないのでしょう。

生産が増えないのに人手が足りないとなれば、労働人口の減少でしょうか。高齢化によって、日本の生産年齢人口は年率およそ1%のペースで減少しているはず。つまり、生産が増加するから人手が足りなくなるのではなく、高齢の社員が退職するから人手が足りなくなってくる。とはいえ、たかだか年率1%程度の社員減少が原因で、企業の6割が人手不足を感じるとは納得できませんね。だって、1%といえば、100社のうち1社ですから。

とはいえ、「人手不足だー」と言いつつ、すべての企業がロボット化を進めると、すべての企業が人手不足を感じつつも、生産能力は維持され、消費が維持される可能性はあります。しかし、総消費額=総所得額の関係にありますから、消費が維持されつつ労働者数が減少するとなれば、労働者1人当たり賃金が上昇するはず。ですが、賃金は伸びない。

しかし、労働者の賃金が増加しなくても、高齢化にともなって年金支給総額が増加すれば、それが賃金の伸び低迷をカバーして、日本全体の消費量が維持される可能性はあります。ただし年金として政府の債務を増加する可能性がある。これやると、政府の債務が増加して、逆に企業の金融資産が増加する。

う~ん、今はいろんな要素が均衡状態で、この先、どっちへ流れていくか微妙な位置なのかも知れません。それで「景気がいまいち良くないのに、企業の6割が人手不足」という、わけのわからないことになっているのかも。

このまま「人手不足だー」と言いつつ、ロボットを導入し、労働者の実質賃金が伸びないまま、消費が低迷してデフレが長期化するのか。しかも年金カットでさらにデフレ。それとも海外から移民をどんどん入れて、日本の経済が成長するも、国民の1人当たり賃金は伸びないという、企業だけよろこぶ日本になるのか。

このままじゃ、なにも期待できそうにない。