2016年11月4日金曜日

銀行の信用創造が有効だったのはなぜか

銀行の貸し出し(=信用創造)とは、銀行が保有している現金を誰かに貸すのではなく、新たに預金通貨を発行してこれを現金と同等であるとして、預金を貸し出します。これは銀行のバランスシートから明らかですが、この行為は、銀行が保有する現金の何倍ものおカネを貸し出すことになりますから、つまり、無からおカネを作って増やしている、いわば「打出の小槌」を銀行は振っているわけです。これが信用創造です。

こんな、怪しげな事が許されてきたのはなぜなのか。それは、銀行制度が「かつて」、経済成長にとって有効だったからではないかと思うのです。どうして有効だったのか、考えてみました。

まず、貯め込まれたおカネを放出する効果があるとおもわれます。この場合は、打ち出の小槌でおカネを増やす話ではなく、たとえば、金庫にある現金を貸すような場合、昔風に言えば、金貨の貸し出しのような場合です。いわゆる一般的な貸金業がこれに当たります。

古今東西、おカネは時間と共に、お金持ちにどんどん集中し、独占的に所有されるようになります。つまり、誰かが金貨を貯め込んでしまうわけです。そして、そのまま金貨が死蔵されると、世の中に流通する金貨、つまり取引に使われるおカネの量が減ってしまいます。こうなるとおカネ不足からデフレが発生しますし、人々の手におカネが行き渡らなくなって経済が低迷してしまいます。

そこで、貯め込んだカネを貸すことによって、世の中におカネを回すわけです。もちろん貸し出す金利を課しますから、金利を払うためには商人や職人などの、おカネを稼ぐ(利益を出す)人が、事業を行う目的で借りるわけです。

ところで、経済の成長速度が加速すると、経済を回すために、より多くのおカネが必要になってきます。金貨は金が採掘されない限り供給できませんから、金貨の供給量には限度があります。つまり経済の成長速度が速いと、金貨で貸し出していたのではおカネの供給が間に合わないわけです。

一方、紙幣であれば、紙に印刷するだけなので、ほとんど無限に増やせます。こうして、最初の段階の信用創造、つまり紙幣が生まれてきました。つまり、銀行は、金庫にある金貨の何倍もの紙幣を発行し、これを貸し出すようになったわけです。

いまでは、紙幣つまり現金の発行は中央銀行だけが行いますが、今度は民間銀行がこの現金を元にして、何倍もの預金を発生し(信用創造)、これを貸し出しています。

こうして、銀行がおカネをどんどん発行することで、金貨の量によらず、何倍ものおカネが供給されることになり、金貨の不足による経済の低迷を防ぐ結果となったと考えられます。

そして、信用創造のすごいところは、「持っていないおカネを貸すことができる」点です。つまり、ある意味、強制的に世の中のおカネを増やすことができるのです。これは金貨にはまねのできない芸当です。錬金術は不可能ですから。しかし、これがなぜ経済を成長させるのでしょうか。

おカネを借りたい人は、つまり事業を起こして、商売や工場などを始めたい人たちです。そうした人たちにおカネを貸してやれば、借りた人が事業を始めることで、新たな商品やサービスが世の中に供給されるようになります。もし金貨のようにおカネの量が限られていたなたら、借りたい人すべてにおカネを貸すことは不可能です。銀行に打出の小槌があればこそ、小槌を振って、借りたい人に潤沢におカネを貸せるわけです。

ところで、世の中の生産能力は限られています。たとえば労働者の人数は一定ですが、この一定の労働力を用いて、経済では「消費財」と「生産財」の二種類の財が生産されます。消費財は食料、衣類などの生活用品、生産財は工場や生産設備のような生産能力を高める財です。

銀行の貸し出しが増加すると、これらのおカネを借りた人は事業を始めますから、そのおカネは生産財の生産に振り向けられ、その結果、生産財の生産に生産力(たとえば労働力)が割かれるようになります。そのため、(たとば人手不足で)消費財の生産が間に合わなくなり、消費財が不足して値上がりする「インフレ」が生じます。つまり、銀行が無理やりにおカネを増やして貸し出すからインフレは発生します。

しかし、もし、銀行が無理やりにでも、起業家におカネを貸さなければ、生産力は延々と消費財の生産を続けるだけになるかも知れません(もちろん企業の売り上げ利益再投資を除けば)。これでは生産能力は高まりません。つまり、インフレと引き換えてでも、生産力を生産財の生産に振り向けることにより、経済が成長できる(生産力が拡大する)わけです。

つまり、通貨貸し出しを通じて、生産力と資源を生産サイドへ投入することができたから、銀行の信用創造には効果があった(もちろん副作用も)。

思いつくままに書きましたので、少々わかりにくいかも知れませんね。そのうち、本編のサイトにでも書こうと思います。