2016年12月16日金曜日

脱グローバル化は時間をかけるべき

トランプ氏がアメリカの次期大統領に決まり、グローバリズムを見直す動きが広がりつつあります。脱グローバル化です。これは各国の経済的な独立性を高め、リスクに強い自立した経済を確立する意味では、とても歓迎すべきだと考えています。しかし、急にやってはいけないと思います。

グローバリズムは前の世紀から、何十年も時間をかけて行われてきた社会システムの「構造改革」です。構造改革にはそれくらい時間がかかります。ですから、何十年もかけて改造された構造を正常化するにも、何年もの歳月が必要とされるはずです。

実際、各国はすでに依存関係にあります。経済の効率化を優先したため、独立性がそこなわれ、他国に依存しなければ経済が成り立たない状況にあります(経済的依存症)。この構造において、各国間のおカネの循環がすでにできており、その通貨循環を前提に経済が動いています。もし急激に構造を変更すると、通貨循環がうまくゆかなくなり、経済が混乱、マヒ状態に陥る可能性があります。

ですから、慎重に、周到な準備を行いつつ、長期的な計画に基づいて脱グローバル化を進めなければなりません。もし拙速な判断で混乱を起こせば、再び依存症グローバリズムに引き戻される危険性もあると考えられます。

グローバリズムの有効性はテクノロジーの進化と共に薄れます。人工知能と完全自動生産工場が普及すると、各国ともさらに生産過剰と人手あまりが増加して、分業どころではなくなるでしょう。しかも、自動生産機械や完全リサイクルが普及するほど、どの国も生産条件が似てきます。つまり、国際分業の必要性が希薄になります

とはいえ、テクノロジーはまだ完全にそのレベルには達しておらず、薄れたとはいえ、国際分業の有効性も残っていると思います。また途上国と先進国の為替差もまだまだ大きい。ですから、急ぐ必要はありません。急げば逆効果です。

そうした点から言えば、トランプ氏が急進的な脱グローバル化を図ろうとするなら、これはあまり賢明な方法とは思えません。

まず、最初にすべきは、これ以上過激なグローバル化が進まないよう歯止めをかけることでしょう(無節操な移民や過度な自由貿易協定)。そのうえで、時間をかけて構造を改革し、他国に依存しない経済的な独立性とリスクへの強靭性を高める。そして、短期的な対策としては、政府支出の増大による内需活性化や、分配政策により、速やかに不満を持つ国民に対処すべきではないかと思うのです。