2017年1月4日水曜日

ベーシックインカムは再分配ではなく分配

多くの人はベーシックインカムを再分配だと考えているようです。しかし、その本質は再分配ではなく「分配」なのです。経済を「消費者」と「生産者」から成るとした時、技術的失業によって何が生じるか考えてみましょう。

人工知能や自動生産工場が導入されると、生産者サイドにおける財の生産量は維持、あるいは増加します。同時に人手が余剰となるため労働者は解雇されます。すると、賃金として生産者から消費者に流れ込む通貨量が減少します。

消費者サイドでは、生産者から流入する通貨量が減少するため総購買力が低下し、消費量が減少します。そのため、生産者サイドにおいて売れ残りが発生します。これが生産過剰の原因となります。つまり、生産のしすぎが原因ではなく、消費の不足が原因で結果として生産過剰になります。

にも関わらず、生産サイドでは生産過剰を解消するために生産量を減らします。その結果、人工知能や自動生産工場が導入される以前に比べ、逆に生産量は減少し、経済はデフレ不況(生産縮小スパイラル)へと突入してゆきます。

以上より、これら一連の原因は、生産者から消費者への支払い賃金の低下、つまり通貨流通量の減少にあることがわかります。これを解消するためには、「生産者から消費者へ向かう、賃金に換わる通貨の循環システム」を導入する必要があると考えられるのです。それこそがベーシックインカムの経済学的な根拠です。

「生産者から消費者へ向かう、賃金に換わる通貨の循環システム」は、明らかに再分配ではありません。再分配とは、消費者サイドの内部において、所得の高い階層から低い階層への所得移転を意味します。消費者の中でおカネがぐるぐる回っているだけです。これでは技術的失業問題はあまり解決しません。本質的には「生産者と消費者の間でまわるおカネを増やさねばならない」のです。

そして、「生産者から消費者へ向かう、賃金に換わる通貨の循環システム」の場合、その財源は企業への課税であるため、再分配の形になりません。強いて言えば分配する前の段階で課税します。しかし、そもそもこれは賃金に換わって構築される通貨循環システムであるため、従来的な税という概念とは異なると考えるべきだと思います。あえて言えば「社会的賃金支払い」です。社会に対して賃金を支払うのです。

そして、社会に対して支払われた賃金を、政府が代行して回収し、すべての国民に配当金として支払うのです。これがベーシックインカム(国民配当)です。

このようにして、労働の対価である賃金を通じて生産財が分配される「市場経済」と同時に、国民配当を通じて生産財が等しく国民に分配される「分配経済」が並行的に運用され、これが相補的に機能することで、未来の経済システムが実現されると思われます。

人工知能と自動生産工場が爆発的な生産力の拡大をもたらすこれからの社会において、「市場経済」だけで矛盾なく経済を運用することはもはや不可能です。いよいよ人類は「市場経済」と「分配経済」との混合型経済という、新たな段階を迎えるのです。

新年おめでとうございます。