2017年1月5日木曜日

ベーシックインカムから自給自足経済へ

ベーシックインカムによる分配経済が経済の最終形態であるとは思えません。未来の社会では、ベーシックインカムすら不要となる経済が主流になると思います。それは自給自足経済です。それを予兆させる技術が3Dプリンターです。

3Dプリンターは、一つの機械で様々な財(モノ)を作り出すことを可能にします。とはいえ、現在の技術レベルで生産できるものは限られています。しかし将来的にはこうした3Dプリンターが進化を遂げ、これを一人ひとりの個人が所有できるようになれば、さながら「個人専用工場」を保有しているようなものです。

そもそも、市場経済における交換も、分配経済における分配も、財の生産を家計(個人・家族)とは別の主体が担うからそれが必要なのであって、家計が自らが消費財を生産するのであれば、交換も分配も必要ありません。資源(原材料・エネルギー)があれば良いだけです。資源は家庭内リサイクルや自然エネルギー(自家発電)でまかなうことができるようになるでしょう。

究極的にいえば、もし、家庭に万能3Dプリンターと資源があれば、個人の中だけで、完全閉鎖型の経済、つまり自給自足が可能となります。このとき、ベーシックインカムはその役割を終えると思われます。もちろん、はるか遠い未来の話です。とはいえ、すでにそうした状況は部分的に生まれつつあり、我々の実生活の中で、徐々に増加してゆくはずです。

そうなると、いよいよ「仕事」などなくなります。ただし、万能3Dプリンターで製造する製品の設計データのようなものを開発する必要があります。すると人々は財を生産するのではなく、データ(情報)を作るのが仕事になります。データは無限にコピー可能なので、たとえば1人のエンジニアが巨大人工知能を利用して、地球の全人口70億人に提供するデータを作り出せます。情報に希少性はありません。

さらに、現在でもソフトウェアではフリーソフトが膨大に出回っていますが、こうしたフリーのデータが、どんどん増えますから、仕事として労働の対価を受け取る人は、全世界のごく少数になってしまうに違いありません。

もちろん、そんな経済システムが今すぐ実現するはずはありません。しかし、こうしたことを考えてみるのは決して無駄ではないはずです。人類はそこへ向かって進化を続けるはずであり、その変化は突然現れるのではなく、いまから徐々に現れるからです。

そしてもし、現在の社会に様々な矛盾が生じているのなら、未来へ向けたテクノロジーの進化に対して、社会や経済のシステムが対応できず、機能不全を生じていると考えることができるはずです。そのような認識が、現代社会における問題の分析と解決に何らかの役割を果たすはずだと思います。