2017年2月16日木曜日

ベーシックインカムは徐々に導入すべき

2017.2.16
(ねこ)
ベーシックインカムはテクノロジーの進化に伴う技術的失業問題を解決するだけでなく、社会保障としての機能も有する優れたシステムだ思うにゃ。でも、いきなりベーシックインカムを導入すると世の中が混乱しないか心配だにゃ。

(じいちゃん)
ベーシックインカムはまったく新しい制度じゃから、社会に混乱を招く心配がまったく無いとは言い切れんじゃろう。そこでワシはいきなり完全なベーシックインカムを実施するのではなく、徐々に導入すべきだと考えておるのじゃよ。その一つの方法が増額方式じゃ。

ベーシックインカム制度の導入直後から毎月12~15万円の最低生活保障の金額を支給したら、仕事を辞めてしまう人が続出するかも知れん。すると社会が大混乱になってしまう。「ベーシックインカムを導入しても仕事を辞める人は増えない」と主張する人も居るが確たることはわからない。じゃからリスクを避けるために、小額のベーシックインカムから初めて徐々に支給金額を増加させる方法が良いと思うのじゃ。そして十年から十数年かけて完全に最低生活可能な金額まで増額するんじゃ。

(ねこ)
にゃるほど、いきなり高額のおカネを支給するんじゃなくて小額から始めれば仕事を辞める人はほとんどいないから大丈夫だにゃ。様子を見ながらベーシックインカムを徐々に増額すれば、社会に何か変化が生じたとしてもそれほど大きな変化ではないから、容易に対処できるはずだにゃ。

(じいちゃん)
しかも月額1~2万円程度の小額ベーシックインカムから始めるなら財源として増税を行う必要は無い。仮に1万円を全国民に給付するために必要なおカネは約1.2兆円じゃ。年間なら約15兆円で可能じゃ。現在、金融緩和政策として日本銀行が年間80兆円の現金を発行して民間銀行から既発行の国債を買い取っておる。この80兆円のうち15兆円を使って新規に国債を買い取り、これを財源として政府がベーシックインカムを実施することが可能じゃ。このように政府がおカネを発行して国民に給付することをヘリコプターマネー(ヘリマネ)というんじゃ。

おカネを世の中に供給すれば必ず消費が増えて景気が良くなり税収も増加するじゃろう。そうすればベーシックインカムを継続するための税収も徐々に増えてくるという寸法じゃよ。ヘリマネという手法については反対意見も多いが賛同者も多い。デフレ脱却の効果もあるので十分に検討すべき政策じゃと思う。

(ねこ)
増額方式のほかにもベーシックインカムを徐々に導入する方法はあるのかにゃ。

(じいちゃん)
年金・子供手当て方式がある。これは高齢者と子供に対するベーシックインカムから始めて、徐々に適用する年齢を拡大してゆく方法じゃ。ベーシックインカムに反対する理由として仕事を辞める人が増えるとの指摘があるが、65歳以上の高齢者と15歳未満の若年者は労働力人口ではない。じゃから高齢者や子供にベーシックインカムを支給しても仕事をする人が減るという心配はない。もともと働かなくてよい人々じゃから、そうした人が働かねば満足に生活できないことがむしろ問題じゃ。

いま高齢者の貧困が増加しつつあり、生活保護受給世帯の40%以上は高齢者じゃ。しかもどんどん増え続けておる。結局のところ貧困の高齢者には生活保護を支給せざるを得ないのじゃから、いっそのことすべての高齢者に無条件で支給する方がよいじゃろう。そして国民年金の保険料月額約16,000円は廃止する。今まで保険料を払い込んだ人については年金の支給額を上乗せしても良いじゃろ。

また子供の貧困も深刻化しており、6人に1人が貧困状態という信じられない事態になっておる。貧困家庭の子供が十分な教育を受けられないことから、大人になっても貧困から脱することができない「貧困の連鎖」も問題になっておる。こうした子供の貧困を解決する意味から15歳未満の子供、あるいは20歳未満の子供に無条件で一定のおカネを給付する仕組みを導入する意義は大きい。

まずは働かなくてもよい年代からベーシックインカムを導入し、さらに年金の支給開始年齢を65歳から徐々に引き下げてゆくわけじゃよ。

(ねこ)
にゃるほど、労働人口ではない人が仕事しなくても何の問題もないにゃ。まずは年金と子供手当てのベーシックインカム化から始めるのは面白いと思うにゃ。他にもあるかにゃ。

(じいちゃん)
そうじゃな、失業手当を強化する方法もある。こちらは失業している人だけに支給する方法じゃから、制度導入時に必要な予算は先の二つよりも少なくて済むかもしれん。現在の失業手当は金額が少ない上に期間限定じゃから、長期的な失業に対しては焼け石に水じゃろう。技術的失業問題による失業は長期化する恐れがある。なぜならテクノロジーの進化のスピードがあまりに速いため、新たな仕事が生まれるよりも仕事を失う人の方が遥かにはやいペースで増加すると思われるからじゃ。そうなれば一旦失業してしまうと、かなり高度で専門的なスキルでも持っていない限り、おいそれと仕事は見つからんじゃろう。

従って長期的な失業に対して十分なケアを準備して置かなければ、失業の増加によって深刻な7デフレ恐慌を招いてしまう恐れもある。じゃから失業手当の支給期間を無期限とし、失業している限り支給し続けるようにするんじゃ。

(ねこ)
そんなことしたら、みんな会社を辞めて失業給付を受け取るようになるんじゃないかにゃ。

(じいちゃん)
そういう心配はあるのう。それなら失業手当の支給条件として職業訓練を義務付ければよいと思う。職業訓練セミナーなどに参加して、未来型の産業に必要とされる様々なスキルを勉強したり、専門的な資格を取るんじゃ。そうすれば新しい産業に即戦力として就職ができる。そして成績や資格の取得状況に応じて失業手当の金額をUPする成果主義を加味してもよいじゃろう。それなら安易に仕事を辞める人は減るじゃろ。

とはいえ、いくらスキルや資格を取得したとしてもすべての人に職を与えることは難しいかも知れん。新しく生まれる仕事も次々に人工知能やロボットに置き換えられてしまうかも知れんからじゃ。すると結局のところ失業者は増え続け、やがてほとんどの人が失業給付で生活するようになってしまうじゃろう。すると事実上ベーシックインカムみたいなもんじゃ。ただしこの方法だと正式なベーシックインカムのように「働いた分だけ所得が増える」ことにはならない。生活保護に近い。じゃから労働意欲を高める効果はあまり期待できんかも知れないのう。

(ねこ)
ふ~ん、いきなり完全なベーシックインカムを導入するんじゃなくて、段階的に導入するいろんな方法があるんだにゃ。これなら一概に「ベーシックインカムは良い、悪い」じゃなくて、方法論を含めた多様な議論が出来るにゃ。

(じいちゃん)
その通りじゃな。今説明した方法はあくまでワシが思い付く限りの範囲に過ぎん。まだまだ良い導入方法があるかも知れんので、みんなにも考えて欲しいと思うのじゃ。