2017年3月15日水曜日

「ハイパーインフレがー」は根拠不明

安倍政権以前には「金融緩和するとハイパーインフレがー」が大量に湧いていましたが、最近でもおカネを発行するとインフレが止まらなくなるとの迷信が根強いようです。しかしその明確な根拠は寡聞にして知りません。

ヘリコプターマネーの重要性(財政政策+金融政策)が説かれる一方で、反対論が非常に強く実施に至っていません。その理由はインフレが止まらなくなるとの批判です。しかし、インフレの根拠の説明はほとんどありません。説明としてあるのは「おカネの発行を止められなくなる」という論だけです。

しかし、なぜ「おカネの発行を止められなくなる」のでしょうか。騒ぐだけで説明が無いのです。仕方ないので、考えてみましょう。

「止められなくなる」現象には大きく2種類があります。

①景気対策として止められなくなる
②おカネの発行が勝手に止まらなくなる

景気対策として止められなくなる。ところで、発行したおカネはどこへ行ってしまったのでしょうか。そもそも発行したおカネが世の中を回れば景気がよくなりますから、その時点でおカネの発行を止めることができます。ところが発行したおカネを誰かが貯め込んでしまえば、いくらおカネを発行しても循環は良くなりませんし、景気は回復しません。それではキリがありません。

この場合は、誰かが貯め込んでしまったおカネに課税して吸い上げ、それを財政投資として世の中に循環させてやらなければなりません。そうすれば、それ以上におカネを発行する必要はなくなり、おカネの発行を止められます。

おカネの発行が勝手に止まらなくなるメカニズムは何でしょう。おカネのうち、「現金」の発行を止めるのは簡単です。インフレターゲットにより、例えば「消費者物価上昇率3%を超えたら日銀が現金の発行を止める」と法律で決めれば、必ず止まります。

しかし同じおカネでも「預金」の発行を止めるのは簡単ではありません。預金は民間銀行が発行するおカネですから、それを強制的に止めるメカニズムは存在せず、インフレターゲットなど無関係にどんどん預金が発行されます。こうして世の中の預金が増加することでインフレが止まらなくなるリスクはあります。

もちろん日銀など中央銀行が政策金利を引き上げることで、預金の増加に歯止めを掛けることは可能です。ただし、多くの場合これに失敗してバブルとバブル崩壊を繰り返してきた歴史があります。

とはいえ、預金を止めるのは、実は簡単です。民間銀行が勝手に預金を発行するのを禁止し、世の中のおカネのすべてを日本銀行が発行するようにすれば良いのです。日本銀行の発行するおカネ(現金・日銀当座預金)だけで世の中のおカネを回せば、日銀がおカネの発行を止めた時点で、それ以上におカネが増えることはありません(政府による硬貨発行は除く)。

以上より、おカネの発行が止められなくなる2種類の現象は、いずれも対応が可能です。おカネが増えなくなれば、インフレはいずれ収束します。おカネが増えずにインフレだけ亢進することはあり得ません。

なぜなら、物価とは「おカネと財の交換レート」であり、おカネと財の量の比率で決まるからです。もし世の中のおカネの総額が100で、商品の総量が100とすれば物価は1となり、それ以上に上昇しません。100以上のおカネを払えないからです。100の商品を120のおカネで払えば物価は1.2に上昇しますが、それはおカネが120に増えなければ不可能です。

以上より、「ハイパーインフレがー」を気にする必要はまったくありません。ただし、これからの経済には「金融資産課税」と「通貨改革」が不可欠であることが分かります。