2017年4月27日木曜日

ルペン氏はヘリマネによる財政出動をすべき

フランス経済が復活するにはユーロ通貨からの離脱が正しい選択です。しかし、それだけではユーロ離脱の本当のメリットは何も享受できません。ヘリマネによる財政出動、通貨の膨張がなければマクロン氏と大差ないのです。

EU・マクロンの決定的な問題点は緊縮主義にあります。そしてEUが緊縮主義である限りフランスは緊縮せざるを得ません。なぜなら、フランスはユーロに加盟することで通貨発行主権を失っているからです。そのためフランス独自の金融政策(金利操作、国債オペ)ができないことはもちろん、中央銀行による国債買い入れが不可能ですから、財政均衡主義を取らざるを得ないのです(そうしないと国債がデフォルトする)

さて、政府のマクロ経済政策は「金融政策」と「財政政策」からなりますが、なんと、フランスはユーロ加盟によって「金融政策」と「財政政策」の二大政策を使えなくなってしまいました。マクロ政策が使えない。これで大統領に当選したところで、どんな経済政策が打てるのでしょうか?事実上、フランスは何も出来ないのです。笑うしかありません。これでフランスの経済が良くなったら奇跡というか、神の手による魔法か何かでしょうw。

逆に言えば、ユーロから離脱して独自通貨「フラン」を回復したなら、ユーロの支配から逃れて「金融政策」「財政政策」を再び自由に使うことが可能になります。それこそがユーロ離脱の最大のメリットであり、通貨主権回復のメリットです。ですから、金融・財政の積極的な政策展開を行わないのであれば、ユーロを離脱する意味はまったくありません。

ルペン氏がそれを理解しているかが問題です。

自由貿易を制限して、関税によって国内製品を守ったところで、それだけで失業が減って景気がよくなるわけではありません。総需要が増えなければ意味がありません。移民を制限しても総需要は増えません。実は、ルペン氏も財政赤字を縮小するとの考えを持っています。ただし単なる財政均衡主義ではなく、財政ファイナンスを容認する考えももっているようです。

財政ファイナンスは広い意味ではヘリコプターマネーを意味します。つまり政府主導による流通通貨量(マネーストック)の増大です。これをさらに一歩踏み込み、フランス国民全てに給付金を支給することで、総需要を引き上げれば良いのです。これは、ユーロ圏に留まると主張するマクロン氏には絶対にマネできない経済政策です。まさに通貨主権のなせる業です。

欧州先進国における生産性はすでに十分に高いレベルにあるはずであり、いま必要なことはさらなる生産性向上ではなく、高い生産性に見合うだけの潤沢な通貨循環です。

ルペン氏がそれを理解してヘリマネを実施すれば、マクロン氏とはまったく違った成果をもたらすことができると確信します。しかし、ルペン氏が単なる反EU、反移民に留まるなら、おそらくマクロン氏と大差ない、あるいはそれよりも期待はずれの結果しか生まない恐れもあると思います。