2017年5月9日火曜日

ルペン氏は民族主義に頼りすぎている

反グローバリズム運動は民族主義ではなく、経済政策の見直しがその本質です。しかしルペン氏は経済よりも民族主義的な反グローバリズムの色彩が強い、これでは左派系の人々の支持を得ることは難しい。失業と格差を解消すべく、経済的な政策を強化すべきでしょう。

まずルペン氏が行うべきは、国民にグローバル経済の課題を理解させることにあります。フランス国民の多くは、通貨統合ユーロが今日の経済的な不況、高い失業の原因であることを理解していないようです。なぜなら世論調査においてユーロからの離脱を望む人が少ないからです。これはかなり致命的だと思います。

もちろんユーロに加盟したままであっても、ECBが今よりさらに拡張的な金融政策を行い、加盟各国の財政政策のためにヘリマネのような支援を実施すれば良いのですが、今の緊縮状況では、明らかに通貨統合が裏目にでているだけです。これなら独自通貨の方が、マクロ経済政策を駆使できる分だけ、経済を立て直すには有効なのです。

こうしたことを理解させなければ、広く国民の支持を得ることはできません。多くのフランス人は深く考えることなく、新聞マスコミのばら撒く「統合のばら色イメージ」を漠然と信じて、感情で動いているからです。もちろん、新聞マスコミのばら撒く「極右のマイナスイメージ」も、漠然と人々の感情に影響しています。

民族主義だけで経済の問題を解決することは不可能です。

民族主義的な立場、つまりフランス・ファーストとして、輸入品に関税を掛けるだけでは経済は立ち行かないです。移民を制限しただけでも経済は立ち直りません。経済の問題は経済の理論を使って解決する必要があるのですが、ルペン氏にはそれが弱い。

テロリズムによる社会不安の増大や、それに伴う排他的民族主義の高まりを支持基盤としても長続きはしません。治安が回復すれば用済みになるだけです。しかし、治安が回復しても失業や格差が改善することはありません。だからこそ、長期的には失業や格差を解消することが政策として最も重要です。

ユーロ離脱がなぜ失業や格差の改善に役立つのか、デフレの解消に役立つのか、そうしたことを十分にフランス国民に理解させること無く、民族主義的な、主権独立の精神だけで「ユーロ離脱」を唱えたところで、支持を広げることは難しいでしょう。

民族主義的な枠組みを超え、右派左派の壁を超えて、経済分野における「反グローバリズム」勢力の幅広い結束を実現する。それこそ、一般民衆が拝金主義・グローバル資本の世界支配に打ち勝つ唯一の方法だと思います。