2017年8月7日月曜日

マクロを優先しミクロはその後でOK

経済に関係する問題を解決するためには、何よりまずマクロ政策が優先されるべきで、ミクロ政策はその後で行う方が効果的です。そうしなければミクロは無駄な努力になってしまいます。

マクロ政策とは経済の環境を改善する政策です。世の中のおカネを増やし、おカネの循環を良好にしたり、物価を安定させたりすることです。それによって家計や企業などの経済活動を活性化し、社会を全体として豊かにすることも可能です。

例えるなら、それは魚にとっての水質環境のようなもので、いくら素晴らしい、優秀な魚を飼育したところで、水が悪ければ魚はダメになってしまうでしょう。もし水質が最低の環境で魚が育たないのだとすれば、それは魚に責任があるのではなく、環境に原因があることは明白です。

同様に、人間の経済活動においても、経済環境が悪ければ、どんな政策を行っても効果はありません。例えばブラック企業を取り締まり、最低賃金を上げても、あるいは失業者の自己責任を追及して扱いを厳しくしたり、職業訓練を施しても、効果は知れています。こうした政策は経済環境そのものを変えることはできないため、ミクロ政策と呼ばれます。

まずマクロ政策で経済環境を整えることが最優先です。

例えば、低賃金・長時間労働を強いる企業をいくら潰したところで、そうした企業はもぐらたたきのようにいくらでも出てきます。人々は生きるために低賃金・長時間労働でも受け入れざるを得ないため、世の中の仕事の量が少ないと、ブラックと知りつつも、ブラック企業に人がどんどん集まるからです。

また、企業の立場から言えば、デフレ不況の環境下では商品が売れないため、一円でも安く商品を売らなければ市場競争で淘汰されてしまいます。そのため、ギリギリまで人件費と労働時間を厳しくしなければならず、そうでない企業は潰れて消えます。そして最終的にはブラックな企業だけが生き残ります。

これでは、低賃金・長時間労働の問題は解決しません。

ところが、マクロ政策で経済環境を変えると、まるでウソのように物事が反対方向に回り出します。

例えば、おカネを発行して全ての国民に配ると、国民の購買力が向上して消費が増大し、その結果として企業の生産活動が増加して仕事が増えます。仕事が増えれば、何もムリをしてブラックな企業に勤める必要はありませんので、人々はより待遇のよい企業に次々に転職し、ブラック企業は人手がいなくなって潰れます。わざわざブラック企業を取り締まって潰す手間(ミクロ政策)は必要ないのです。

また、企業の立場から言えば、景気がよくなれば商品がどんどん売れるため、ムリに安くする必要はありません。そのため従業員をより高い賃金・短い労働時間で雇用することが可能になりますし、また、雇用条件を良くしなければ、他の企業に人手を引き抜かれてしまいますから、可能な限り労働者の待遇を良くするようになります。

つまり、企業も労働者も、
マクロ環境という釈迦の手のひらの上で踊らされているのです。

マクロのように、経済を全体から俯瞰してみると、「善」も「悪」もありません。企業も家計も単に「環境に適合するように行動している」だけです。その結果が「善」になったり「悪」になったりしているのです。つまり、環境次第で善にも悪にもなるのです。

ブラック企業のような違法な企業は取り締まられて当然ですが、大切なのは、本当に悪いヤツは誰なのかを知ることです。それは「マクロ環境を悪くしている連中」なのです。そいつらのせいで、人々は好むと好まざるとに関わらず「悪人プレイ」を強いられているのです。