2017年11月2日木曜日

出口戦略とは何か

新聞テレビは出口戦略や金融正常化と報道するものの、具体的に何をするのか伝えません。なので国民の大部分は、単に言葉のイメージだけで「新聞テレビが言うのだから、いいことなんだろう」としか理解していないでしょう。

中途半端に知識のある人は、世の中のおカネを減らすことだと思っています。新聞テレビの一部の報道でもそう言ってますから。しかし金融システムの基本を理解していないため、まるでトンチンカンな理解です。これでは何も知らないほうがマシです。

出口戦略とは、銀行の保有するマネタリーベース(現金)を減らすことです。いわば銀行の金庫の中のカネを減らすことであり、金庫の外つまり世の中のおカネを減らすことではありません。銀行が世の中に貸し出すおカネの「元本」を減らすだけです。

マネタリーベースを減らしたところで、それだけでは世の中のおカネ(マネーストック)は1円も減りません。銀行の中のカネが減るだけです。マネタリーベースを減らそうが、増やそうが、それだけでは世の中のおカネは1円も増減しないのです。

実際に世の中のおカネが増減するのは、銀行の貸し出すおカネが増えるか、減るかによって決まります。ですから、銀行の貸し出しをコントロールすることが、金融政策の基本なのです。出口戦略と称する方法も、銀行の貸し出しをコントロールする一つの手段に過ぎません。

新聞テレビは「世の中に出しすぎたおカネをそのままにしておくとバブルになる」といいますが、これは本質的な間違いです。正確には「銀行に与えすぎたおカネ(マネタリーベース)をそのままにしておくと、これから銀行の貸し出しがどんどん増えてバブルになる」のです。これから銀行が貸し出しを増やすことでバブルになる恐れがあるのです。

つまり、銀行の貸し出しを制限することが、出口戦略の本質的な意味なのです。

貸し出しを抑制するには、大きくは二つの方法があり、一つは貸し出しの元本であるマネタリーベースを銀行から回収すること、もう一つは銀行が元本を信用創造で膨らませて貸し出す際の倍率を制限することです。

新聞テレビが盛んに報道するのはマネタリーベースの回収のことです。いわゆる日銀の量的緩和政策を終わらせて、銀行から回収するのです。その一方で、貸し出し倍率を制限する政策すなわち預金準備率の引き上げについては、マスコミから完全にスルーされています。不思議です。

マスコミがスルーするからには、やはり裏があるのでしょう。とにかく日銀に国債を買わせたくない人たちがいるのかも知れませんね。