2017年12月26日火曜日

超スパコンでリフレ派もケインズ派も超える

近い将来、超スーパーコンピューターの登場により、シミュレーション経済学が実用化できれば、これまでの経済学は時代遅れになるかも知れません。

経済は非常に多くの要因によって動く、どちらかと言えば、理論物理学よりも気象学や生態学に近い分野です。極めて多くの要素が相互作用するので、すべての影響を再計算することは不可能であり、そのため予測が困難でした。

そこで、経済学におけるリフレ派もケインズ派も、現実の経済活動を単純モデル化し、計算可能な一本の公式に落とし込んで経済学の分析を行います。こうすれば計算は簡単にできます。両者ともコンピューターはおろか計算機すら満足に存在していなかった時代の理論ですから、これはやむを得ないでしょう。

ところが今日、スーパーコンピューターの開発が加速度的に進んでおり、量子コンピューターという「超スパコン」も登場しつつあります。こうなると、複雑な相互作用を単純公式化するのではなく、複雑なまま計算してしまうことが可能になります。もちろんコンピューター・シミュレーションにも単純化は必要ですが、遥かに複雑なことができます。

こうしたシミュレーションはすでに気象分野で実用化されています。気象現象をスパコンの強力な計算能力によって無数回の計算を繰り返すことでシミュレートするわけです。擬似的にコンピューター上に気象現象を再現することができるので、これによって天気予報、長期予報だけでなく、地球温暖化の影響なども予測されています。

経済におけるシミュレーションの難しさは、人間の行動予測の難しさにあると思われます。人間は必ずしも経済合理性に基づいて行動するわけではないからです。ただし、こうした分野も人工知能を応用すれば、より人間に近い意思決定をシミュレートすることが可能なると思われます。個々に意思決定をするバーチャルな経済人からなる1万人くらいの社会を用意するわけです。それぞれ個性や年収、職業などの属性を別々に設定します。

それに比べて環境設定は比較的に容易でしょう。なぜなら、人間の社会は人間の作り出しているシステムに過ぎないからです。そこにはルール(法律・習慣)が決まっています。それらの条件はすでにわかっているため、人間の本能・衝動などよりはるかに簡単に設定できるでしょう。

そして、様々な環境下において個々のバーチャル人間が行動(ミクロ)した結果をすべて合成することで、社会全体(マクロ)の経済活動がどのように変化してゆくかを観察できます。最初は現実離れした結果が導き出されるでしょう。しかし実験を繰り返せば、やがてシミュレーションの精度が向上します。バーチャルな経済社会がスパコン上に現れます。

すると、「なぜそうなるか」がわからなくても、経済が正確に予測できるようになります。「なぜそうなるか」を理解するためのものではないのです。これが従来の経済学とはまったく違う点です。もちろん、ここで想像するほど簡単ではないでしょうが。

こうした超スパコンの開発にはいくらおカネをかけても良いと思います。もし成功して経済シミュレーターが完成すれば、その経済効果は何兆円にもなると思うからです。最適な経済政策があらかじめシミュレーション上で確認できるからです。

日本のスパコン研究者が研究費を不正受給したとして逮捕されましたが、その額は4億円、その他もろもろの助成金総額は100億円になると騒がれていますが、わずか100億円に過ぎません。スパコンの開発に毎年総額1000億円の投資はあたりまえ、それくらいの考えが必要だと思います。

そして利権争いのために学者、政治家、官僚、マスコミが大騒ぎして経済政策が紆余曲折する現状に終止符を打つべきだと思うのです。