2018年1月10日水曜日

生産性は景気次第で変わる

生産性=仕事の効率、と思っている人は多いでしょう。しかし生産性は仕事の効率とは無関係に景気が良くなれば高まり、景気が悪くなると悪化します。

実際のデータを見てみましょう。以下は日本生産性本部のレポートから抜き出したグラフです。



見にくい場合はリンク先を参照ください。http://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2017_full.pdf

図から一目瞭然です。生産性上昇率にご注目ください。リーマンショックによる2008年の景気の悪化(デフレ)が生産性を大きく損なっています。ITバブルの崩壊した2001年にも低下しています。また消費増税の1998年と2014年にもそれぞれ生産性の伸びが低下しています。

では、不況になると働き方が非効率になるのか?そんなことはありません。働き方は同じなのに、生産性が落ちるのです。つまり、働き方とほとんど無関係に生産性が決まるのです。

つまり、生産性を高めるためには、働き方改革で仕事の効率を高めるよりも、むしろデフレを脱却して景気を回復し、増税を行わないことが効果的であることが示唆されます。

なぜこんなことになるのか?

理由は簡単です。一般にいう生産性とは「付加価値生産性」と呼ばれる、おカネの物差しで算出する数値だからです。付加価値は売り上げが増えると増加します。そのため景気が良くなって、モノやサービスが売れる環境になると生産性が向上するのです。

一方で、仕事の効率は「物的生産性」と呼ばれる、生産される財(モノやサービス)の量で算出する数値です。効率よく仕事をすれば、より多くの財が生産されるので、物的生産性は高まります。これは付加価値生産性と違うものです。

ところが、一般に新聞テレビ、政治家、学者が「生産性」と呼ぶ場合は「付加価値生産性」を指します。

仕事を効率化すれば物的生産性が向上しますから、より多くの財が生産されます。しかし景気が悪くてそれが売れ残るなら、付加価値生産性は向上しません。すなわち、仕事を効率化したとしても、いわゆる生産性(付加価値生産性)が向上するとは限らない。

しかし、このことを新聞テレビや政治家・御用学者は触れません。

そして本来、生産性(付加価値)を高めるためには脱デフレ、景気回復、増税の回避が必要であるにもかかわらず、逆に「景気回復のためには生産性(物的)を高める必要がある」と、しらっとした面で言います。

そして働き方改革と称して「仕事の効率化をしろ」と圧力をかけてくるのです。