2018年1月24日水曜日

そもそも管理通貨制度は財政ファイナンスですが

「財政ファイナンスは不正行為」という仰天の暴論を発見しました。そもそも管理通貨制度において、日銀は「財政ファイナンスしなければ通貨を発行できない」のです。

執筆のために、日銀が国債を買い取る行為、つまり量的緩和に対する反対意見、副作用として何が巷で騒がれているかをネットで検索していたら、少々古い記事ですが、Yahooに、ぶっ飛びの記事がありました。

これは地獄への道。日銀の追加緩和ではっきりしたアベノミクスの「金融詐欺」

この記事は「全身突っ込みどころ満載の記事」ですが、こういうウソや抽象的なイメージ言葉を羅列するマスコミの記事は例を挙げればキリがありません。ところで、その中に、極めつけの一文があるので引用しますと、

”政府が借金を中央銀行に引き受けてもらう「財政ファイナンス」と、・・・・をやるというのは、どちらも明らかな「不正行為」である。”

政府が借金を中央銀行に引き受けてもらうのが財政ファイナンスだと定義し、これを不正行為だと主張する。しかし、もしそうなら、日銀が通貨(マネタリーベース)を発行すること自体が不正行為になってしまいます。なぜなら日銀は国債を保有することで通貨を発行するからです。

国債を保有するとは「政府の借金を引き受ける」ことに他なりません。個人が国債を保有すれば、それは政府の借金をその個人が引き受けていることです。もしそれを別の誰かに転売すれば、新たに国債を保有する人が借金を引き受けていることになります。

現在の通貨制度の基本的な仕組みのひとつが「管理通貨制度」です。これは金本位制度に代わって金(きん)との兌換を約束しなくとも通貨を発行できるようにした仕組みです。この場合、日銀は金の代わりに国債を買い入れることで通貨を発行します。つまり「政府の借金を引き受ける」ことで通貨を発行しているわけです。

ゆえに、もし「日銀が政府の借金を引き受けること」が明らかな不正行為であるならば、日銀が通貨を発行することは明らかな不正行為であり、管理通貨制度そのものが明らかな不正行為であると主張することになります。バカバカしい論ですね。

もし日銀の国債買い入れに反対だとしても、「不正行為だ」と騒ぎ立てるのではなく、これこれの副作用があるから反対である、と主張するべきでしょう(例えば通貨を発行すしぎるとこうなる等)。「正・不正」という表現はレッテル貼りそのものだからです。

そもそも、この世に最初から「正・不正」などありません。「正・不正」は後から決められるものです。何が「正・不正」を決めるかと言えば、その行為が導き出す結果であり、そうした議論なしに、ただ不正だ・不正だと連呼するのは偏向誘導です。

しかもこの論者は「不正だから悪いことが起きる」という主旨の発言をしているが、そういう因果関係に必然性はありません。むしろ正しくといわれることをしても、悪いことが起きることはある。不正だから悪いことが起きる、正しいなら良いことが起きる、そんな単純な話ではありません。

そうではなく、「悪いことが起きるから不正」なのであって、悪いことが起きなければ、そもそも不正であるとの仮定に誤りがある可能性もあるのです。

この記事のように「レッテルを貼って、そのレッテルを根拠に攻撃する」手の論法はマスコミに氾濫しています(例えばポピュリズムというレッテルを貼って、そのレッテルを根拠に攻撃する等)。多くの読者がこれに騙されるため、未だに後を絶ちません。ますます私達大衆はメディアリテラシーを高める必要があると思います。