2018年2月8日木曜日

賃金の伸び悩みは生産性が原因ではない

新聞マスコミは、生産性の伸びが低いために賃金が伸びないのだと主張する。しかし生産性が伸びない理由はモノが売れないからです。デフレつまり「循環通貨の不足」が根本的な原因と考えられます。

一般に「生産性」とは労働生産性を指します。しかし、何度も指摘していますが、労働生産性には「物的生産性」と「付加価値生産性」の二種類があります。そして物的生産性と付加価値生産性は似ているようで、実は大きくちがう概念です。にも関わらず新聞マスコミは場面ごとに両者をきちんと使い分けするのではなく、どの場面でも単に「生産性」と書くことで、意図的に両者を混同させているのです。

それを踏まえた上で言えば、いくら企業が投資したり、労働者が効率的に仕事をして「物的生産性」を高めたとしても、モノやサービスが売れなければ「付加価値生産性」は1円も増えないのです。なぜなら付加価値とは売り上げが増えることで増加する性質だからです。

生産性(付加価値)は、モノが売れなければ伸びないし、
当然ながら賃金(名目)が増えるはずないのです。

しかし、新聞マスコミはそこには触れません。そしてマスコミは企業や労働者に努力を要求します。生産性を高めろと主張します。しかし、冷静に考えれば誰でもわかることですが、いくら企業や労働者が努力したところで、国民に十分な購買力がなければ売り上げが増えるはずがないのです。

仮に前世紀(1900年代)のような「一億総中流」の社会であったなら、企業や労働者の努力が付加価値生産性を高めるかも知れません。なぜなら国民の多くが「小金持ち」だったからです。商品があればどんどん売れたのです。しかし労働者の賃金は失われた20年で減り続け、しかも「カネのある層」と「カネのない層」が生じてきました。今や総中流はおろか、むしろ「カネのない層」が多いのです。

おカネがないから商品が売れない。そんな世の中であれば、一体、どこの企業が設備に投資するというのでしょうか。一体、どこの企業が従業員の賃金を引き上げるというのでしょうか。

商品が売れなければ賃金は増えません。
商品は国民におカネがなければ売れません。
そうであるなら、国民におカネを配れば良い。

新聞マスコミは、こうしたあたりまえの考察すら怠り、ただ既存の常識に染まりきった頭で、条件反射的に口から出てくる言葉を記事にしているだけとしか思えません。所詮、「カネのある層」であるマスコミ人には「危機感」が無いのでしょう。

生産性を高めるには、まず国民の購買力を高めるべきです。そうすれば間違いなく「付加価値生産性」は向上し、労働者の賃金も確実に伸びてきます。もちろん申し上げるまでも無く、デフレから完全に脱却できるでしょう。