2018年3月22日木曜日

イタリアでベーシックインカムは実現するか?

イタリアでは選挙公約にベーシックインカムを掲げた政党「五つ星運動」が大躍進しました。これは画期的な出来事ですが、仮に五つ星運動による政権が誕生しても、ユーロ圏である限り、イタリアのベーシックインカム実現は多難です。

新聞マスコミは、「五つ星運動はポピュリズムだ」と連呼し、さかんにネガティブキャンペーンを展開しています。しかし市民運動が既存の右派・左派政党を上回る政治勢力に成長できた画期的な出来事であり、既存の政治勢力に政治を独占されてきた日本でもこうした運動に希望が持てることの証明だと思います。

ところで、日本の新聞マスコミはほとんど報道しませんが、五つ星運動は「ベーシックインカム」を選挙公約に掲げていました。ニューズウィーク日本語版の記事によれば、1週間の社会奉仕と求職活動を継続していることを条件に、全国一律月780ユーロのベーシックインカムを実施するといいます。現在の議席数では、五つ星運動だけで政権を立てることは難しい状況ですが、もし他党との協議が成功して五つ星運動を主体とする政権が誕生すれば、先進国で始めて、ベーシックインカムを実施する国が誕生するかも知れません。

とはいえ、実際に五つ星運動がベーシックインカムを実現できるのでしょうか?それについてはかなりの困難が予想されます。その理由は、

イタリアがユーロ圏だから難しい。

ユーロ圏ということはイタリアに自国通貨がない、つまり国民に通貨を発行する権利がない、通貨は外部(欧州中央銀行)からの借り物でしかないのです。こうした状況では、通貨の発行を財源として利用することはできません。ベーシックインカムの財源はすべて税収である必要があります。となれば、かなりの増税を行なう必要があります。

増税は相当に大きな社会的抵抗があるはずです。しかも日本の消費税をみてもわかるように、増税による経済への影響はかなり大きいはずです。これは簡単ではありません。

もしイタリアが日本のように自国通貨を有する国であれば、通貨を発行して財源にすることができます。とはいえ、いきなり100兆円も毎年発行すれば混乱するでしょうから、いきなり毎月満額のベーシックインカムをスタートするのではなく、月額1万円からスタートして毎年徐々に支給額を増やしてゆく方法をお勧めします。それなら、増税しなくても比較的簡単に実現できます。

ですから、五つ星運動は何よりもまずユーロ圏を離脱し、自国の通貨発行権(=主権)を取り戻す必要があるでしょう。そして人工知能や自動生産機械の進化、すなわち生産資本の蓄積に伴う供給力の増加に応じて、世の中のおカネを増やしつつ、ベーシックインカムを徐々に実現するべきだと思うのです。

もしイタリア人がユーロ通貨に目がくらんで固執するなら、
イタリアのベーシックインカムは必ず失敗するでしょう。