2018年4月7日土曜日

輸出拡大より内需拡大を急げ

日本は貿易立国だから輸出拡大は当然だ。そう考えている人は多いかも知れません。しかし貿易立国だとしても輸出拡大の必然性はありません。

そもそも貿易の基本は「国内で調達できない資源を手に入れるため」です。例えば石油を買うためには外貨が必要であり、その代表格が米ドルです。たとえば資源1単位=1ドルとして、日本で100の資源が必要なのであれば、輸出によって100ドルの黒字を稼ぎ出し、その100ドルで100の資源を買えばよいわけです。すると輸出の黒字100は輸入代金100と相殺されますから、それで貿易は成り立ちます。それ以上の貿易黒字は必要ないのです。

生産の国際分業の観点(比較生産費説)から言えば、貿易は資源の調達ではなく多国間における生産コストを抑えるためにありますが、しかしこの場合においても貿易黒字を必要とするわけではありません。輸出ばかりどんどん増やしても意味がないのです。

もちろんそれは基本であって、貿易黒字で稼ぎ出した外貨を外国に投資すれば、日本の企業などは海外に資産を有することになり、これが金利等を稼ぎ出しますから、悪いことではありません。いわゆる対外純資産です。しかし日本の対外純資産はすでに世界最大クラスですから、もう十分かも知れません。

あるいは、開発途上国の段階であればより多くの外貨を必要とします。なぜなら資源だけではなく、先進国から多くの生産設備(資本)、技術などを導入する必要があるからです。ですから途上国はより多くの外貨を必要とします。しかし日本はその段階をすでに過ぎています。

その一方、輸出が増大すれば国内の景気が良くなることは明らかです。その意味では輸出拡大に頼りたくなる気持ちはわかります。しかし、なぜ輸出が増えると景気が良くなるのか?その理由は通貨循環量の増加にあります。

輸出企業が儲かれば、外貨を得られます。その外貨は為替市場で円に戻されますが、その円が輸出企業の従業員、あるいは仕入先、関連企業などに流れます。こうして貿易黒字は国内の通貨循環量を増加させます。これが国内の経済を刺激すると考えられます。しかし、もし貿易黒字によらなくとも、企業の売り上げが増加し、従業員等におカネが流れるのであれば同じことが言えるでしょう。

つまり、外需によって輸出を増やしておカネを回しても、内需によって国内消費を増やしておカネを回しても、同じなのです。国内のおカネの循環を増やすために、必ずしも外貨を稼ぐ必要はありません。むしろ「必要以上に外貨を稼ぐ」からこそ、貿易不均衡だと非難されるのです。

輸出によって外貨を稼ぐことは必要ですが、必要以上に外貨を獲得しても意味がありませんし、貿易摩擦を拡大するだけです。日本は内需を拡大し、内需主導でおカネを回して景気を回復するべきでしょう。

内需拡大とはすなわち国民がそれだけ多くの消費をすることであり、それは国民生活が豊かになることを意味します。その具体的な方法は何も難しくありません。単純におカネを発行し、それを国民に広く公平に配れば良いだけなのですから。